特許調査のやり方 | H22.2.15 |
特許調査のベテランから聞いた上手な特許調査のやり方をご紹介します。そのポイントは調査の様々な記録です。
1.調査依頼があったらまず議事録を書く
正式なものが面倒と思ったらメール本文で良いから、主要な技術内容、注意すべき事項、対象の資料、調査の期間、報告日、金額について依頼元から上限などがあればそれも書いて、依頼元に送ります。依頼元との意思疎通が大切です。
2.調査範囲などの詳細を決める
依頼事項を確認しつつ、調査の開始時期や公開USPをやる必要があるかどうかなどを決めます。権利侵害予防のような調査では、現時点で登録になっている特許の調査は必須ですが、費用が十分にとれるならば公開公報も調査したいものです。そうすることで、今後登録になりそうな特許までリストアップできます。
USPの公開公報がいつから始まったか分からないときは下記が参考になります。
http://ipbase.cool.ne.jp/patentcity/hensen.htm
また上記URLは、日本の特許公報の変遷もわかって便利です。平成と西暦の対応がつかないときも便利です・・・平成年号に88を足した下2桁は西暦の下2桁になるのは知っていても不安になる人向きです。
3.調査記録を書き残す
検索式と検索回答の件数や、なぜそのような検索式にしたかをワード文書に書き残していきます。これには、インターネット検索などで知った該当技術に関する知識などいろんな事項を書き込みます。
あまりダラダラと書くと時間がかかりすぎますので、簡単明瞭に書いておくことが大切です。
4.最終的な見積もり価格を依頼元に伝える
予備調査を行なって目視チェックする件数などを決め、依頼元の要望と合っているかどうか考えて見積額を決めます。実際の仕事では見積もり以上の金額を請求することはできません。また、口頭で打ち合わせた金額よりもはるかに低価格でできると思える場合、それで本当に依頼元の要望を十分満足しているかどうか、よく考えることが必要です。
特許調査と並行して、インターネットを駆使して該当技術に関する知識を習得することは大切です。
5.現時点で分かっている内容で調査報告書を書く
このベテラン人のお勧めですが、この段階で調査報告書を書くそうです。もちろん調査結果は書けませんが、調査の目的や範囲などは書けるはずです。これによって、不明点がはっきりするとのことです。もちろん、報告書は調査が終わってから最終的にまとめます。
6.検索をして目視チェックする特許リストを表示する
このとき、抄録1件の表示が高価なシステムだと件数を100件台まで絞らないと、出力代金が高くついてしまいます。ところが、そうすることで必要な特許が漏れてしまうことが起きます。検索で数少なく絞り込むことは、どうしても漏れが多くなります。
普通の調査では少なくとも500件、普通は1000件以上、時には2000件くらい目視チェックするつもりで行なえば、漏れの少ない調査を行なうことができるように思います。そのような漏れの少ない調査を行なうにはPatentWebのように出力料金がかからない(契約によっては非常に安価な)システムは重宝します。
・・・これから以降は、従量制のデータベースと固定費制のデータベースでやり方が異なります。ここでは、PatentWebのように固定費制のやり方を中心に紹介します。
7.検索結果の抄録を表示させ、必要に応じて明細書を見る
調査の内容によっては抄録だけでは分からないことも多いので、そのような場合には用心して特に調査の最初のうちはできるだけ多くの明細書を見ることを勧めています。抄録を見ている状態から明細書表示を行なうには、番号リストの画面を後ろに開いておいて利用する裏技が便利です。(113や87で詳しく説明してあります)
8.必要な特許の番号などを記録する。
必要な特許が見つかったらそのときExcelなどに書誌事項や抄録をコピペ(コピーしてペースト)していけば、最後にきれいなリストがそろいます。ベテラン知人は大きな画面を使って下記のようにPatentWebの抄録画面とExcelがメンを2つともフルに表示させてやっています。
別のパソコンの知識豊富な知人は、ディスプレイを2つ接続可能なパソコンを使っており、各ディスプレイにPatentWebの抄録とExcelを表示させて使っています。
小さい画面が1つの場合は、PatentWebとExcelの画面を重ねて表示するしかないので操作がやや面倒ですが、同じようなことが行なえます。
9.関連度の低い特許も記録する
関連特許の番号などを記録する場合、ズバリのものだけでなく少し関係するものも拾っておくのが大切です。これをやっておくと、ズバリの特許がなかった場合でも関連特許としてこのようなものがあると報告することができます。逆に、これをしておかないと、数日かけて目視チェックして「該当なし」の返事しかできないこともあり、依頼者は不満をもつことになりかねません。
記録の際、Excel台帳の「関連度」にBと入力しておけば区別がつきます。また「メモ」欄を設けて、どのように関係するのか、なぜBなのかを簡単に書いておくことは大切です。
10.角度を変えた検索を検討する
一番可能性のある検索だけでなく、ちょっと緩やかにした条件による検索の結果を目視チェックすることで、漏れをさらに減らすことができます。
このとき、検索結果からすでに見た特許の集合を除く(検索ではnot検索する)ことが、効率的な調査のために大切です。
条件を緩やかにする検索・・・例として、テレビ放送の暗号化に関する調査においては、最初は「テレビ and 暗号」の意味となる検索を行なっているでしょう。これに対して、条件の緩やかな検索とは「放送
and 暗号」とか「テレビ and 有料化」などが良いと思われます。
また条件を緩くすると件数が極端に多くなり、見積り費用内でやれない場合があります。そのような場合には、さらに技術的なキーワードで絞るとか、最近の特許だけに絞る、出願人を絞るなどを併用することが有益です。これにより若干漏れが生じることになりますが、何もしないよりもはるかに良い調査になっているはずです。
11.調査途中で記録メモを書き残す
抄録や明細書を見ている過程でいろいろ気付くことがあります。個々の特許の内容に関することならばExcelの各特許の「メモ」欄に書けば良いのですが、それとは別です。全体的なことを、先に紹介した検索経過を記録するワード文書に記録しておくことをお勧めします。
例えば、ワード文書に特許番号をコピペして、内容を簡単に書き出し、これらは○○が無いのでBにするなどです。そうすることで、調査の観点の振れを少なくでき、調査品質を高くできます。また、最後の報告書をまとめるときにもその記録は役立ちます。
12.特許リストには特許明細書へのハイパーリンクを
Excelの特許番号から明細書へのハイパーリンクを付けておけば、依頼者はワンクリックするだけで明細書を参照できるので、喜ばれます。
インターネット環境での利用であれば、USPならPatentWebへのリンクでも良いし、USPTOでもよいでしょう。また、100件程度ならば全件をダウンロードして報告書と同じCD-Rに記録し、それにハイパーリンクを付ければインターネット環境でなくても参照できます。そのやり方の詳細はこちら。
13.報告書のまとめ
最初にすでに一部分を書いている報告書に、検索式や調査結果を書き込み、全体を見直します。最後に「コメント」という項目を設けて、依頼者が今後どうしたらよいかを簡単に書くと喜ばれます。
例えば、「この調査では該当特許は無かったので一応安心できるが、日本企業に関しては米国への出願だけの調査になっているので、余裕があれば日本も調査するのが望ましい」とか、
「Aランクの特許はさらに細部を検討して製品との抵触関係を弁理士に相談するのが良い」などです。