概念検索によるアイデア発想支援

概念検索を使うと、自分の課題やアイデアと類似の
特許情報を簡単に探せます。これを利用して、先行知
識を学び、自分のアイデアの完成や新しいアイデアの
創生に生かすことができます。 
⇒概念検索の歴史と利用法に関する論文

⇒ない頭の絞り方

 「発想」とは、異なる知識を組合せて新たな情報を得ることと言われています。先入観にこだわらず自由な発想を行なうためにいろんな手法が考案されています。しかし、やり方が難しいものや効果の不明瞭なものが多かったように思います。
 特許情報は先人の発明・知識をまとめたデータベースであり、概念検索(漏れは少々あるかもしれないが)自分の欲しい特許を簡単に見つけられる大変便利なシステムです。そこで特許情報を概念検索で手軽に利用することで、先人の知識を自分のアイデアのブラッシアップや発想に活かす方法を考察してみました。
 やり方は、類似特許の調査が基本ですが、意図的に違う分野を探すことも役立つことがあります。

1.アイデアのブラッシアップに活かす
 すでに具体的なアイデアを持っている場合、それを良いアイデアに育てることに役立ちます。個人的な検討や、また技術検討会の席にLAN接続のパソコンを持ち込んで利用していただといっそう効果的と思われます。
使い方・・・自分のアイデアの文章をそのまま質問として入力する。
 回答から先行技術を学び、自分の不足部分をみつけたり、新しい解決法や課題のヒントを得る。

2.発想に活かす
 やや長期にわたり関連知識の習得手段として特許情報を利用します。
使い方・・・課題の文章をそのまま質問として入力する。
 広い基礎知識・専門知識の習得に加え、新しい考え方やニーズ、また具体的な解決手段のヒントを得ることも期待できる。。

このやり方を薦める理由; 発想の条件として以下のようなことが言われていますが、概念検索による特許情報(=先行技術)の利用は、具体的で分かりやすい上手な知識習得の手段ではないかと考えるものです。

・多くの発明が既存のアイデアの組合せを基礎にしている。
成果を上げた多くの人が、先行技術を参考にすることが独創技術の開発に役立つと言っている。
コペルニクスの地動説も、彼の独創ではなく、フィチーノの理論が元になっている。
数学者ガロアさえも、前の科学者たちの業績に導かれる、と言っている。
モーツアルトも
(少なくとも初期の作品は)先人の作品を大きく参考にしているとの意見がある。
  「超」発想法”のP43〜45にかけて、モーツァルト研究家であるアンリ・ゲオンの「モーツァルトは模倣に模倣を重ねやがて完全に模倣できるようになった。・・・あまりにそっくりに模倣したため、彼の作品とお手本の見分けがつかなくなり、お手本の方が逆に彼の作品を模倣しているかのようであった」や、アルフレート・アインシュタイン、木村武一氏の見解を紹介してあります。

2001年ノーベル化学賞を受けた野依教授の書かれた記事(読売新聞、2002.4/20)より抜粋
 独創的な発想のためにはしっかりした知識の基礎が必要だ。ものごとを深く理解していなければならない。その上で一生懸命考える。悩みながら継続して考える。そこまでして時たま、はっとするような発想が出てくる。情報は自分の中に刷り込まれて、初めて知識と言える。例えば、鉛筆で傍線を引きながら繰り返し本を読み込むなど、情報を自分に刷り込む実践が必要。・・・昨今の学生はもう少し基本的知識の充実が必要である。

・アイデアは環境が整うまでは発展せず、眠っているものがいっぱいある。
エジソンは電球のフィラメントを陰極にすると陽極に電流が流れるとして特許をとったが、
 フレミングによる2極真空管の発明はそれから約20年後であった。
ナイロン開発の失敗データをもとにして、はるかに高性能のポリエステルが10年後に合成された。

・偶然による創造も、価値を評価できる専門知識が必要である。
アオカビは誰でも見ていたが、ペニシリンは発見できなかった。
リンゴが落ちるのを何万人も見ているが、万有引力を発見できたのはニュートンだけだった。
触媒を1000倍まちがえる失敗で偶然に薄膜が成長。物性測定を可能に。白川秀樹(2000年ノーベル化学賞)

・発想は頭の中で行なわれるものであり、手法的発想法は、多くの場合役立たない。
ルールに気をとられ、縛られては発想できない、発想は対象とする内容に没頭することが必要。
発明にはパターンがある、しかし多くの場合それは結果論である。

○○法で発想が行なえたということは、ほとんど聞かない。

・発見も発明も、小さな改良も、発想のメカニズムは同じである。
T型モデルを作って車を大衆化したヘンリーフォードも、他人の発明を組合わせたと言っている。
eビジネスの多くも、これまでのビジネスとインターネットを組合わせたもの。


・研究者の現在の行動パターンを大きく変える必要がない。
現在の体制にそのまま導入できるので、抵抗が少ない。
習得に時間がかからず、創造的な頭脳労働を行ない易い。

・二番手ねらいとは関係ない。
二番手ねらいとは、先行アイデアと類似のことを行うことであり、収益性が低いと言われている。
先行技術(=特許)を学ぶことと、二番手ねらいとは関係ない。
先行アイデアを学んで、独自性の高い発明を創造することが重要。

    ※主な参考文献
     (1)「超」発想法;講談社、野口悠紀雄
     (2)発明の極意早わかり;ダイヤモンド社、飯田清人