効率的な特許調査法 H22.6.26

 再度、ベテラン調査員から教わった効率的な調査のやり方です。
今回は、数多くの特許を目視チェックする必要があるとき、重み付け、または優先順を付けて目視する方法です。

例えば、検索で3000件余りあるような場合、あなたは新しい方から順に見ていくのではないかと、言われました。それに対して、この人がいうには、数多い場合にはその中であたりの可能性の高い集合に小分けして、順に見ていくのが良いということです。

1.3000件を順次見るようなやり方では、どこに必要なものが出てくるか分かりませんので、全期間に渡って同じように緊張して見る必要があります。これは大変つらいものです。

2.早めに典型的な関連特許を知ることができれば、その技術の詳細な事項、例えば、関連用語や変形例だけでなく、歴史的な経過などを知ることもできます。その知識はその後の調査に役立ちます。

3.重要なものは調査の初期に時間をかけて目視チェックし、残りは、知識が豊富になっているし当たりの出てくる可能性が少ないので、短時間で見る。

そのため、目視チェックする場合は、重要な順に重み付けをして参照することが大切だというのです。

 実は、新しい方から見ていくのも一つの重み付けです。もし発行年がランダムになっている特許を見るよりも新しい方から見ていけば、最近話題になっている特許を早く見つける可能性が大きいといえます。

 しかし、必ずしも新しいところに必要な特許があるとは限りません。そこで、技術的に重み付けをしようと言うわけです。

 例えば、通信などにおける暗号や透かし技術に関する米国特許を検索してみました。
検索式 (watermark or cryptograph) and (television or communication)


 回答;3451件ありました。


題名を見るだけでも必要なものがあるようで、これ以上絞ると必要なものが抜ける恐れがあり、これ以上絞りたくありません。しかし3451件も見ると、抄録の機械翻訳などを組み合わせても相当の日数がかかりそうです。

 このような場合、重み付け/優先順位を付ける方法として下記のような方法があります。
・検索式のキーワードの近さを指定して再検索して重要なものに絞り込む
キーワードなどをandでさらに追加して絞り込む
出願人を限定して絞り込む
発行年を限定して絞り込む

キーワードの近さを指定して絞り込む
 近傍検索とか近接演算などといいます。andの代わりに、near22などにより22ワードの間に左右のワードが出てくるものに絞るものです。ワードがある程度の近さに出てくると確信できる場合に有益です。
(watermark or cryptograph) near22 (television or communication)

 この例では約1/10になっており、目視チェックしやすくなります。


キーワードなどをandでさらに追加して絞り込む
 技術的にさらに絞り込むキーワードがはっきりしている場合に有益です。
 (watermark or cryptograph) and (television or communication) and "copy control"

 この例では、8%程度に絞り込んでおりさらに目視チェックしやすくなります。


●近傍検索とキーワード追加による限定の併用
 下記のように組み合わせることも可能です。
(watermark or cryptograph) near22 (television or communication) and "copy control"

 こうすると内容的に近いものに件数を絞り込むことができます。


 まずこれらの絞り込んだものだけを目視チェックしすることで内容的に近いものを高い確率で見つけることができます。それらを見て、調査対象の技術に関するさらに深い知識を得ることができます。←これが重要です。

 次に、すでに見たものを除いた検索を行います。例えば、上の91件を見たとすれば、それを除くような検索式を作ります。そのやり方の1つは、下記のように検索式自体にnotを入れて除くようにする方法です。
 (watermark or cryptograph) and (television or communication) not ((watermark or cryptograph) near22 (television or communication) and "copy control")

 3451件から91件を除いた件数(3360件)になっています。


 もう一つのやり方は、検索式を組み合わせる方法です。
まず、Search Historyをクリックします。



式番号を確認して検索式を作成します。下の例は[11 not 12]としています。


 「run」をクリックして実行させます。


 回答件数は、下記のように、検索式自体を組み合わせたときと同じく3360件になっています。


 次に、先ほども一度検索したものですが、下記のようにキーワードを追加した検索式で検索し、すでに見たものを除いて目視チェックします。
 検索式; (watermark or cryptograph) and (television or communication) and "copy control" 
 
 その結果(式番号=14)からすでに見たもの(式番号=12)を除きます。


 こうすることで、264件が173件に減りますので目視チェックは簡単になります。この173件は、式番号=12の91件よりも当たりの可能性は少し少ないのが一般的といえます。


 次の演算で残りの件数が分かります。⇒ 11 not (12 or 14)
残りは3187件です。


 このようにして、当たりの可能性のある特許から順に目視チェックします。絞り方にもよるのでしょうが、多くの特許調査では優先順の高い方から3割〜5割程度にほとんどのものが出てくるといいます。それ以降の残りを見るときは抄録を見るだけで多くの場合内容の検討がつくので調査が行い易いということです。