米国と中国への出願比率 | H21.11.2 |
一時、日本から米国への特許出願が増えていましたが、最近はやや減少
しているようです。その一方で、中国への出願が増えてきています。
その実情を調べたいのですが、単なる件数比較では企業の再編が行なわ
れ、また規模の大小があってうまく比較できません。そこで日本公開特許
に対する比率として、USP(米国特許)と中国特許を比較することにし
ました。
まず米国特許はPatentWebで下記のようにして件数を検索します。
権利者名の一例として下記のようにしました。
"Panasonic Corporation" or matsushita adj electric
"kabushiki kaisha toshiba"
hitachi adj Ltd
また、登録特許だけにするために特許番号のフィールドを下記のように
しました。再発行特許(Reissue)は含まないようにしました。
not (USD or USPP or USRE or USH)
発行年は、2008などのように入力します。
下図はその検索の実例です。
中国公開特許は、株式会社レイテックのCNwebなどいくつか利用でき
ます。日本公開特許はいろんなシステムで調査可能です。
今回の調査では、2000年と2003年、それから2005年以降は毎年にしました。
2009年は6月までのデータです。(2001年などは面倒なので調べなかったものです。)
その結果は下表のとおりです。黄色部分が日本特許に対するUSP、中国特
許の割合です。
下図は表中の特許件数のグラフです。なお、2009年の件数は表は6月まで
の件数ですので、2倍してグラフを作成しました。
・日立製作所、ソニーは共に日本特許を半減させています。しかしソニー
はUSPで少し増加し、中国では大きく増えていますが、日立はUSPは
減少気味で、中国の増加もそれほどではありません。
・東芝、パナソニック、キヤノンは日本特許をやや減少していますが、USP、
中国は増えています。
・トヨタ自動車は日本特許を2.7倍も急増し、この中ではパナソニックにつ
いで多い件数になっています。USPは若干増えた程度ですが、中国は大き
く増えています。
また、表中の黄色の部分が日本特許に対するUSP、中国特許の割合で、
下記はそのグラフです。
グラフを見ると、各社とも日本特許に対する中国特許の割合が大きく増えて
いるのが分かります。特にソニーはこの10年間に7,8倍も増えています。
USPの割合は全体的にわずか増えているようです。しかし、日立は2007年頃
が最高で最近は大きく減っています。またソニーはSUPでも増えています。
一方、USPではトヨタは大きく減っています。
この状況をもっと明確にするために、下図のように各企業ごとに、日本特
許に対する中国特許とUSPのグラフを作りました。
ソニーとパナソニックは傾向がよく似ています。つまり、2000年から中国
特許の割合は5,6%あったのがその後、急速に増えています。一方USP
もその割合を減らさず増えています。しかし、ソニーの方がその傾向が鮮明
です。つまりソニーはこの10年間で、日本特許を減らす一方で、日本公開特
許のうち4割は中国にも出願されており、USPの割合も4割近くに迫って
いるということです。これは、ソニーが日本と中国を区別しないで考える
ようになっているのかもしれません。
日立製作所と東芝も大きな傾向が似ています。日本特許に対するUSPの
割合は徐々に増えていましたが2006年をピークに減少しています。特に日立
のUSPの割合の低下は目立ちます。
中国特許の割合は2000年は2,3%だったものがその後急速に増えています。
しかし、2008年から停滞や減少しており、共にUSPには及びません。
ソニーやパナソニックとは製品分野の違いがこのような違いになるものと思
われます。
トヨタは日本特許が多いので中国もUSPも割合としては多くありません。
しかし早くからUSPより中国の割合が多くなっています。同社のビジネス展
開の意志を反映しているものと思われます。
キヤノンはUSPの割合が高いままで、中国はUSPの半分くらいです。こ
の傾向は、ソニーやパナソニックなどよりも日立や東芝に近い傾向といえます。
特許件数もこのような加工をすることで、出願動向をいっそう明確にすること
ができます。