SDIサービスは Selective Dissemination of Information の略で
あり、「情報の選択提供」と訳されます。その意味は、
利用者が欲しい
情報を情報センターに登録しておくと、センターでは新規に発行され
た情報からそれに近い内容の情報を選択して、継続的に送付してくれ
るサービスです。
最初の登録の後は、ほとんど何もしないで、自分の欲しい新しい情報を
受け取ることのできるサービスです。自動的に送りつけられ、また自分の
欲しい情報よりも少し広めの情報が入っていることが多いので、新聞のよ
うなサービスと言うこともあります。
これに対して、普通に「検索」とか「調査」というものは、過去に発
行された情報を蓄積してあるデータベースを使って検索するものであり、
「遡及検索」とか「遡及調査」とも言われます。特許調査でデータベー
スの検索をを行なう、といえば普通は「遡及検索」のことです。
検索は自分がいま必要としているものをピンポイント的に探すものです。
・SDIサービス・・・新規発行の情報から必要な情報を受け取るサービス
・(遡及)検索・・・過去発行された情報を対象に検索するもの
■SDIサービスのやり方
SDIサービスは、昔は抄録紙の配布でおこなっていましたが、デー
タベース時代になりネットワーク経由のSDIサービスに変わってきて
います。つまり、データベースがSDI機能を持っている場合には、そ
こに必要な検索式を登録しておくことで、1週間とか1ヶ月ごとに自動
的に検索が実行され、抄録データなどが電子メールで配信されます。
見ない恐れが多いからとか、見ないという人が多いからSDIサービ
スをしないというのは、少なくとも技術開発を行なう企業では良くない
と考えます。そのような企業は多忙な人が多いでしょうから、毎回漏ら
さず見ることは期待できないかもしれません。しかし、全く見ないより
も、たまにでも見ればそれだけメリットがあると考えます。
SDIサービスは、新聞のようなものと言われます。全部を見るわけ
ではないが、気に入ったものがあれば時間をかけてみます。ところで、
新聞はそう高価格ではありません。
ネット経由でSDIサービスを行なえば、紙を配布するサービスより
もはるかに少ない費用で行なうことができます。それだけに、たまにし
か見ない人に対しても送っておくことが必要といえます。
たまにしか見ないこともあるので、SDIとして配る情報の内容は最
低限のものとし、見る行動を起こしたときに、簡単な手続き(クリック
数回)で抄録が迅速に流し読みでき、また、1,2回のクリックで明細
書をみられるような体制を作るのが最良と思われます。
PatentWebでは、
アラートサービスと称してSDIサービスをおこなっ
ています。下記のように抄録だけを受け取り、それを見ていて明細書を
見たい場合、数クリックだけで見ることができます。
また、人手が介在しますが、SGshotソフトを利用できるところでは下記の
ような抄録を受け取り、必要な場合、明細書は複数の方法で見ることができます。
題名に和訳を付けられるのも付属的ですが、読みたくさせる良い方法です。
■検索とSDIの比較
技術者が自分で欲しい情報をデータベースで検索できる時代になったか
らSDIサービスは不要だ、という意見を聞くことがあります。しかし、
自動的に送り付けてもらえるSDIサービスと、自らデータベース検索を
するものとは、大きな違いがあります。
(遡及)検索は、そのつど利用者が自ら行動する必要があり、面倒であ
り、よほどの必要性がないと利用しません。これに対し、
SDIサービス
は、何も行動しなくても送り付けてもらえることが最大の特長です。
特に電子的に行なうSDIサービスは、例えば下記のように電子メールで
送り付けられてくるので、それをクリックし、その添付に付いているファ
イルをクリックするだけで抄録が表示されるように簡単に作ることができ
ます。
また、データベース時代のSDIサービスは各利用者が利用できるので、
情報活用の企画・管理的な部署では、
SDIの利用を各利用者に任せる、
つまり、検索式の作成を利用者に任せている所も多いように聞きます。
しかし、
この利用者に任せるSDIの運用は大きな問題をはらんでい
ます。
そう言っても人がいないから仕方がないということもあるでしょうが、
もし問題が大きいようであれば、必要性を訴えて人を確保するのが管理
部門の役割ではないでしょうか。
(
遡及)検索では、重要な案件の場合は、雑な扱いをせず、調査専門
家に相談するなどの妥当な策が実施されるでしょう。もし、検索に不慣
れな人が検索したような場合でも、その後、吟味する機会があると思え
ます。
SDIサービスでは、これに対して、利用を研究開発者などの利用者
に任せてしまうと、漏れが多いとか、ノイズばかりで見る気もしないよ
うな
間違った検索になっていても気が付かないことがあります。そう
なると、将来にわたって間違った最新情報の入手(SDIサービス)に
なってしまい、そのうちに利用もされないことになりかねません。
■
特許出願システムとの比較
特許出願システムをネットワークで運営している会社も多いと思われ
ます。これは発明者がそれを使わなければ特許出願できないものであり、
少々使い難くても我慢して使ってくれます。つまり社内システムを使う
ことは必須であるため,利用し難くても使われるのです。
ところが、
社外情報を対象とする検索システムやSDIシステムは
、使わなくても何とか済ませてしまうことが可能です。これは社外情
報を見ることが業務上、必らずしも必須でないからです。
社外情報の利用のうち、いま欲しい情報を手に入れるための、いわゆ
る検索は、少々使い難くても使うかもしれません。ところが、将来にわ
たって類似の情報を受け取るためのSDIサービスは、今のことという
より将来のことであり、加えて、手続きが少々面倒であるなどのために
利用されないことが多くなります。
特許情報の利用促進を担当される場合は、この違いを理解して、SD
I体制を構築されることが大切です。