サムスン電子(Samsung Electronics)はUSP(米国特許)がこれまでも急増しておりましたが、USP
公開件数をみると、いっそう急増していることが伺えます。これは同社が件数の多いことに何らかの価値を見出したことの反映とみられます。日本企業などとの米国でのITC(国際貿易委員会)訴訟など厳しい経験をした結果として、そのような結論に至ったのではないかと思われます。
しかし、これだけのUSP出願にはかなりの費用がかかっているはずです。同社は何を考えてこのような出願増加策を行っているのでしょうか?
1990年頃からIBMの特許が急増を始めたのもソフトウエア(コンピュータ・プログラム)分野における特許権の有用性に目覚めた結果であろうといわれたことがありましたが、いまサムスン電子ではそのようなことが起きているのではないでしょうか。
PatentWebで、まずUSP登録件数の多い数社の最近の件数を検索してみました。
発行年と出願人、それに[Patent/Publish No.]で[not (USD or USH or USPP)]としてデザイン特許などを除き、いわゆる特許だけに限定しました。
下記は比較的件数の多い出願人のUSP登録件数の推移です。
(正確に上位7社ではありません)
これを見ると分かるように、日本企業の多くを抜いてIBMに迫る件数です。
発行年 出願人
|
2001 |
2002 |
2003 |
2004 |
2005 |
2006 |
2007 |
2008
3月末 |
2008
通年
予想 |
(合計) |
166,513 |
167,787 |
169,442 |
164,589 |
145,286 |
174,479 |
158,010 |
36,512 |
146,000 |
IBM |
3,453 |
3,333 |
3,436 |
3,272 |
2,970 |
3,633 |
3,142 |
835 |
3,340 |
サムスン電子 |
1,444 |
1,351 |
1,349 |
1,648 |
1,671 |
2,474 |
2,752 |
813 |
3,252 |
松下電器 |
1,514 |
1,628 |
1,865 |
2,030 |
1,716 |
2,288 |
1,961 |
370 |
1,480 |
東芝 |
1,277 |
1,303 |
1,321 |
1,400 |
1,316 |
1,781 |
1,616 |
369 |
1,476 |
ソニー |
1,412 |
1,496 |
1,395 |
1,379 |
1,057 |
1,622 |
1,347 |
337 |
1,348 |
キヤノン |
1,884 |
1,903 |
2,006 |
1,820 |
1,832 |
2,370 |
1,975 |
319 |
1,276 |
日立製作所 |
1,277 |
1,620 |
1,913 |
1,536 |
1,297 |
1,763 |
1,408 |
267 |
1,068 |
なお、検索で利用した出願人名は下記のとおりです。
International Busines* Machin*
Samsung Electronic*
CANON KK
Matsushita Electric Industrial
Hitachi Ltd
Sony corp
Kabushiki Kaisha Toshiba
なお、2004年以前の件数は2005年時点での検索結果です。
ところが、USP公開件数を見ると、もっと驚くべき数値があります。
下記はUSP公開件数をの検索画面です。Issue/Publication Dateと
Assignee/Applicantを指定しています。
下記は、2007年公開のサムスン電子の特許です。
下記は、主な出願人のUSP公開件数です。
なお、USPにおいては米国人は外国に出願しない場合に公開制度の対象
にしないことを選択できるとか、出願時点では出願人(正確には譲渡人)
は明示しなくてもよいそうで、出願人ごとの完璧な検索は難しいようです。
このため、企業によっては出願件数はもっと多いものと思われます。
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公開年2005年 2006 2007 2008/3まで 2008通年予想
IBM 4,483件 4,098 3,312 1,126 4,504
サムスン電子 3,455 5,197 6,234 1,788 7,152
松下電器 1,538 1,523 1,321 308 1,232
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2005年まではIBMの公開件数が多かったのが、2006年以降サムスンが多くなり、2007年は1.9倍近く、2008年も1.6倍くらいになりそうです。
下図はグラフにしたものです。件数の差がより鮮明に分かります。
この集中豪雨的な出願がどの程度審査請求され、審査をパスして特許登録されるのか分かりませんが、普通に考えれば今年から来年にはIBMを抜いて第一位になり、4000件〜5,000件前後が登録されるように思われます。本当にそうなれば驚くべき登録件数です。たぶんUSP史上最大の一社あたりの件数と思われます。
IBMの年間登録件数は3,300件前後ですが、これでも日本企業とは2倍以上の開きのある件数です。
技術的にどのようなものが出ているのか気になるところですが、詳細の分析には時間がかかります。
参考;下記は2007年12月公開の特許です。技術内容的に見ると同社の得意とするエレクトロニクス分野です。
基本的には、特許は件数が重要なのではなく、技術的にまた特許的に内容のしっかりしていることが最大の重要事項です。しかし、このような大量の特許出願、取得はその活動を支える好調な経営状態や精神活動があるものと推察され、質的な向上も想定すべきものと思われます。
サムスン電子のUSP公開件数や登録件数はこのままダントツの状態が続くのか、一過性のものとして減少するのか分かりません。注目が必要と思われます。