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    放射線との付き合い方   ⇒目次 ⇒六車農園

2013.1/2(水)、晴れ

 昨年12月18日の朝日新聞に興味ある記事が出ていました。福島第一原発から350Km離れた十和田市でチチタケというキノコから1Kgあたり120ベクレルという安全基準値を超える放射性セシウムが検出された、ところが半減期が2年のセシウム134は検出されず、半減期30年のセシウム137のみが検出されたと報じていました。その意味する所は、もし福島第一原発からの放射性物質によるものであればほぼ同じ量が検出されるはずであり、半減期が2年のセシウム134は検出されないということは数十年前に汚染された証拠である、そこで汚染の原因としては、ソ連のチェルノブイリ原発事故や中国による核実験が影響している、というのです。

 なるほどそういうこともあるのかと驚き、またこの記事の科学的な内容に感謝しました。その後、ネットで調べてみると同様の主旨のものがたくさんありました。

 ところで、福島第一原発の放射線に関して冷静に説明している記事がありました。放射線の専門家である鈴木崇彦講師(東大大学院・疾患生命工学センター放射線分子医学部門)の話をまとめたもので、科学的で納得のいくものものでした。簡単に言うと、ガンリスクが高まる被曝線量は年間100mSVを超えた場合である、というものでした。また、私が最近関心を持っている「リスクは総合的にとらえる必要がある」という考えとも合っておりました。
http://loveiwaki.cocolog-nifty.com/duketogo/2012/06/post-e0e6.html

※「リスクは総合的にとらえる必要がある」とは、
 例えば、ほとんど影響のない微量の放射線量を危険視して無用の
 避難をし、屋内に閉じこもった場合、それが原因で例えば家庭崩
 壊や子供の心身に傷跡が残る恐れがあれば、避難が適切と言える
 のか、というようなこと。

 ところが中部大学の武田邦彦教授が、ごくわずかの放射線も危険であることをあちこちで講演して回り、知識のない人達に不必要な不安感をあおり、風評被害の拡大を進めているように、私には思えて仕方がありません。そこで実は、昨年12月初めに下記の電子メールを送り反省を求めました。(分かりやすいように一部を加筆訂正しています)

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「まぐまぐ」のメルマガの著者インタビューで下記のことを
発言されていますが、大変軽率なご発言に思われます。
  http://www.mag2.com/magspe/interview148/#top

この中には下記のような発言をされていると書いてあります。

>今は関東北部から東北の太平洋側の海の魚、キノコ類、
>川魚、柑橘類などが危険です。

>私は科学者ですから、安全が確認されていない、放射能を
>浴びた福島の野菜を食べることを止めさせないといけない
>んです。このことを関西のある番組でストレートに言ったら、
>それ以降、呼ばれなくなりました(笑)。

私の住んでいる日立市はご発言の「関東北部」に入ります。

日立市は、市で野菜類の放射性物質量を測定できる機器を購入
して、市民に開放して希望者が持ち込んだ農作物の測定をして
います。30ベクレル/kgあたりが限界値の機器のようですが、
未検出のものがほとんどであり、まれに60~80ベクレル程度の
野菜がありました。2011年末~2012年春ころ。

なおシイタケのベクレル値は確かに高く、100~200ベクレル程
度のものがありました。

また空間放射線量は、昨年秋の地上約1mでは0.16μSv/hから、
この夏にはは0.08μSv/h程度に下がっています。
この放射線量はほとんど普通の状態と考えられます。

しかるに、先生のご発言は「関東北部・・・の太平洋側」とか、
「福島の野菜を食べることを止めさせないといけない」などと
広域を十把一絡げに烙印を押しておられます。
危険な地域があることは分かりますが、それと安全な地域とは
区別しないといけません。

事実に基づかないで、不安感を扇動しておられます。
国民が風評被害の鎮静化に躍起になっているとき、全く逆のこ
とをしておられます。

リスクというものは一般的においても0か1ではなく、その間
に広い領域があります。ましてや社会生活のリスクは関係する
要因が山ほどあり、それらを総合して語られるべきと考えます。

失礼とは存じますが、私は、武田先生は科学の仕事をされてい
ますが、本当に科学的な言動になっていますか?

科学者の名を汚す、iPS細胞で大騒ぎした某氏を思いだして
しまいます。もちろん意図的にウソをつくようなことをされて
いると言っている訳ではありません。
しかし対象が放射能問題であるだけに某氏より影響が大です。

もう少し科学的な事実に基づいた冷静なご発言をお願いできま
せんでしょうか?

先生の最近のご発言は、「偽善エネルギー」や「偽善エコロジ
ー」のご本を読んで、少なくとも一部に共感した者だけに残念
です。

なお私は、原発を増やせとか全部再稼働せよと言っているわけ
ではありません。先生か偽善エネルギーを書かれたはるか以前
から危険な原発などない方が良い、と考えていました。
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 早速返事のメールをいただきましたが、その主旨は概ね、「善良な日本人」なら誰でも合意することしか述べていない、と言うものでした。自分は科学的に正しいことを言っている、とは書いてありませんでした。
 教授は科学的な知見というよりも「現在の日本人に受け入れられ易いことを講演して回っている」と言うことです。

 私は、エッと驚きました。教授は、世の中の人が放射線は怖いと思っているので「怖いですよ」と講演して回っていると仰っています。
 これでは単なる仲介物、自分では判断しないメディアです。科学者としての発言とは思えません。

 武田邦彦氏は、自分は世の中に受け入れられそうだから発言しただけのものである、科学的な真実とは関係ない、と自分から言っておられるようです。このような人は自分の発言に責任をもつことはないでしょう。
 マスコミ、ウエブ、ネットの情報には、このように無責任な発言もあることを十分理解して見ていく必要があります。

 なお私はこれまで、エネルギー全体を考えると原子力は必要なものであり、できるだけ安全に運営したいものであり、最悪の事故が起きたときに備えた避難計画などが必要だと考えてきました。その警鐘のためには、予防注射的な効果を期待して小さな事故が起きることが必要だと考えてきました。そういう事態が起きないと、推進者も反対者も危険を本当に自覚しての議論ができないと考えていました。ところが残念ながら妥当な小さな事故は起こらず、3.11地震でいきなり巨大な原発事故が起きてしまいました。


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